国際結婚の手続き : 『ダーリンは外国人』を在留資格から検証してみる
国際結婚の手続き : 在留資格も考慮した方がいいのでは?
1.ストーリー
『ダーリンは外国人』は、アメリカ人のトニーさんと、日本人のさおりさんが、おつきあいをし、一緒に暮らしていく中での、その生活の一こまを描いた漫画です。アメリカ人のトニーさんの日本人とは一味違った感覚と、それを興味深く観察しているさおりさんの愉快な日常が描かれています。
トニーさんは、大学の講師兼ジャーナリスト(映画の設定)。
さおりさんは、漫画家のたまごです。
二人は、お付き合いをし、同棲して、結婚します。
(入籍の際のエピソードは、第二巻に描かれています。)
結婚の際には、国際結婚の手続きでがんばるのかとと思いきや、
日本の普通の結婚届を市役所に出すことに時間を費やして
国際結婚の手続きの特殊な部分にはほとんど触れていません。
更に、いわゆるビザ(在留資格)にも、一切触れていません。
そこで、トニーさんの在留資格について、
仕事の観点から考えてみました。
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2.状況
トニーさんの仕事について考えてみます。
映画の設定によれば、トニーさんは、大学の講師兼ジャーナリストです。
しかし、この2つの職業の両方共を、そのまま、網羅する在留資格はありません。
ところが、在留資格「日本人の配偶者等」(いわゆる配偶者ビザ結婚ビザ)であれば、両方の職業を特別の許可なく行うことができます。
就労系の在留資格(いわゆるビザ)だと以下の通りになります。
大学の講師が収入の中心と考えると、
在留資格は「教授」かもしれないと考えることができます。
在留資格「教授」は、ざっくりいうと大学の先生が該当します。
トニーさんがどこかの大学の講師であれば、この在留資格に該当していると考えることができます。
そして、大学の研究活動の一環として、報道を行っていると考えることもできるかもしれません。
しかし、報道が大学での研究活動の一環と言えなければ、
「資格外活動許可」を得ないといけないことになります。
このため、「資格外活動許可」を得て、報道関係の資格をしているのかもしれません。
一方、収入の中心がジャーナリストであるとすれば、
まず、在留資格は「報道」かもしれないと考えることができます。
在留資格「報道」は、ざっくりいうと、外国の報道機関に雇われたジャーナリストか
外国の報道機関と契約するフリーのジャーナリストです。
トニーさんが、母国アメリカなどの報道機関に雇われている、あるいは、契約しているジャーナリストならば、この在留資格に該当していると考えることができます。
この在留資格ができる就労活動の中に「大学の講師」は、ありません。
このため、大学の講師は、「資格外活動許可」を得て行っているのかもしれません。
次に、在留資格は「技術・人文知識・国際業務」かもしれないと考えることができます。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、ざっくりいうと、ホワイトカラーの会社員です。
トニーさんが、日本の報道機関に雇われている、あるいは、契約しているジャーナリストならば、この在留資格に該当していると考えることができます。
この在留資格ができる就労活動の中に「大学の講師」は、ありません。
このため、大学の講師は、「資格外活動許可」を得て行っているのかもしれません。
このように、トニーさんの仕事は、日本のいわゆる就労系の在留資格から考えると
非常に、どこに該当するのか難しいのです。
難しいとは、つまり、就労内容が在留資格に合っていないので、
在留状況に疑義ありとして、
在留期間の更新が不許可になったりする可能性があるということです。
在留期間の更新が不許可になると、
在留期限が残っていれば、
再申請か在留資格「日本人の配偶者等」に変更申請をすることができます。
しかし、
大抵の場合は、在留期限が切れており
在留資格「特定活動(出国準備)30日」への
切り替えとなることが多いのです。
ただ、トニーさんはアメリカ人ですので、ビザ免除国の方になります。
このため、就労系の在留期間の更新が不許可になって
在留資格「特定活動(出国準備)30日」になっても、
一旦、帰国すれば、すぐに、90日間の短期滞在で再入国できると思われます。
すると、この間に、在留資格「日本人の配偶者等」の在留資格認定証明書の交付申請をする等の
対策を講じれば、短期間アメリカに帰国するだけで、
また、日本に滞在し続けることも可能かと思われます。
大阪では、在留資格「日本人の配偶者等」の在留資格認定証明書の交付は
順調にいけば、約1カ月で交付されています(2019年3月現在)。
すると、短期滞在の期間内に、在留資格認定書が交付される可能性が高いのです。
つまり、2人が離れ離れになる期間が短くて済むと思います。
しかし、更新不許可の理由により、長期の審査期間となり、
一旦、帰国しないといけないこともあり得ます。
就労系の在留資格で、就労状況が良くないとの内容で
一旦、帰国しているわけですから、
最初から在留資格「日本人の配偶者等」で申請した場合とは
状況が異なります。
このため、一般的な場合とは言えないのです。
また、すべての国がビザ免除国ではありません。
このため、就労系の在留期間の更新が不許可になって
在留資格「特定活動(出国準備)30日」になった場合、
いったん帰国すれば、短期滞在のビザの申請をしなければ、
日本に入国できません。
このため、在留資格について検討する方がいいかと思います。
3.この記事の信頼性
はじめまして。
開業してから、仕事の9割が外国人関連でした。
ビザの申請、帰化、外国人の開業支援、外国人の就職支援などです。
おかげさまで、入国管理局への申請件数が1000件を超えることができました。
もともと、社内SEだった私は、お客様の他愛ないお話を伺うことが好きです。
このため、お客様の要望に沿った申請ができたと思っています。
そして、これが、たくさんのお客様に仕事を頼んでもらえた理由だと思っています。
もちろん、法科大学院卒業後も、関連法令の勉強も続けてきました。
積み重ねた知識と経験で、この記事を書かせていただいています。
4.提案
トニーさんのような業務内容が複数で、複数の在留資格の就労内容に該当するような場合は、
すぐに、在留資格「日本人の配偶者等」(いわゆる配偶者ビザ結婚ビザ)へ
変更することをおススメします。
複数の就労資格に該当するかどうかの判断が難しい場合は
お近くの入国管理局か行政書士等に相談されるといいと思います。
このような場合は、
永住許可申請があと1年で、可能になるから等の事情は
この1年の間に在留期間の更新があるようなら、
考慮しないほうがいいと思います。
日本人の配偶者は、在留資格「日本人の配偶者等」であれば
結婚後3年で永住申請ができるからです。
大人になってからの3年は、あっという間です。
その間に、在留期間の更新が不許可になったら大変です。
3年後は、確実に、永住許可申請ができます。
このときは、配偶者の収入も考慮されるというメリットもあります。
在留資格「日本人の配偶者等」(いわゆる配偶者ビザ結婚ビザ)であれば、
両方の職業を特別の許可なく行うことができます。
在留資格「日本人の配偶者等」には、仕事の制限がないのです。
なぜならば、日本人と結婚しているということに着目してできている在留資格だからです。
例えば、
専門店で調理しながら(在留資格「技能」)、英会話スクールの講師をする(在留資格「技術・人文知識・国際業務」)。
公立の中学校で英会話教師(在留資格「教育」)をしながら、夜はサッカークラブのコーチ(在留資格「技能」)をする。
It関連の会社員として働きながら(在留資格「技術・人文知識・国際業務」)、アパート経営する(在留資格「経営・管理」)。
等、いろいろ、考えられます。
副業が一般的になってきた今は、
こちらの方が、むしろ、自然体で生活できると思います。
したがって、在留資格「日本人の配偶者等」(いわゆる配偶者ビザ結婚ビザ)へ
変更することをおススメします。
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